"白黒無常"と"エミリー・ダイアー"


もそり、と腕の中で何かが身じろぐ気配がして、謝必安は目を覚ました。
何かを抱えている。鎮魂傘か。いや、范無咎の気配は後ろに感じる。なにより温石のように温かい。
そのおかげか布団の中はいつもよりも心地よかった。腕越しに伝わる感触もこれまた柔らかくて気持ちがいい。まだ微睡みの中に半分以上は浸かっている頭が、このままでいたいと訴えていた。
半ば無意識にそれに身を寄せると、ふわりと間近でほの甘い香りが鼻を掠めた。香の匂いではない。首を傾げ、のろのろと視線を下げると、波打つ栗毛の小さな頭が胸元に寄り掛かっているのが見えた。
エミリーだとはすぐにわかった。髪を降ろしているのは珍しい。解いたらこれくらいだろうな、と思っていた通りの長く豊かな髪が枕元に広がっていて、なんだ夢か、と少し落胆した。
あり得ない。この景色は謝必安にあまりにも都合がいい。だから夢だと────夢、かと。
違う。
夢じゃない。
刹那、頭から冷水をかぶったような衝撃で一気に醒めた。
「は……?っ!?」
どうしてここに。叫びかけた口を慌てて塞いだ。混乱して思わず范無咎に助けを求めかけ、しかし直前に昨夜の出来事が脳内で目まぐるしく駆け巡って絶句した。
半狂乱になった己をまざまざと思い出し、謝必安はため息をこぼしたい衝動を必死で耐えた。
出来事というよりもはや事件というべきか。未遂で終わって本当によかった。いやそうではなくて。口を覆っていた手を目元に移動させる。
何という醜態を晒してしまったのだろう。よりによって彼女に。
(いや、まぁ今さらだけど……それにしたって……)
組み敷かれ、凍り付いた表情を思い出す。随分と怖がらせてしまった。情けない以上に申し訳ない。
「ぅ、ん……?」
ひとり猛省していると、ふいに吐息混じりの声がすぐ下から聞こえてきた。ぎくりと心臓が跳ねたが、幸いにも気付かれなかったらしい。
堪えること数秒。ぼんやりとまばたきを繰り返していたエミリーは、唐突にえっと声を上げたかと思うと、先ほどの自分と同じように身体を硬直させた。そこに恐怖がないことに、謝必安は心の底から安堵を覚えた。
息を呑み、恐る恐るこちらを窺う気配を察して、謝必安は急いで目を閉じる。単純に昨日の今日で顔を合わせづらかったのだ。
うそ、と信じられないとばかりにエミリーは呟く。それはそうだろうな、と心の中で共感する。つい先ほどまで同じように狼狽していた謝必安は、腕の中で慌てふためく彼女に比例して平常心を取り戻していく。
というより、逡巡していうちに悪戯心までぷかりと湧いてきてしまった。
「私、あのまま眠って……!?し、謝必安……!」
起きて、と焦る彼女に呼び掛けられる。
さてどうしよう。などと内心で呟いてみるが、良心と好奇心をかけた天秤は、そう時間をかけずに後者に軍配が上がっていた。我ながら性格が悪い。
謝必安、と頬に指先が触れる。躊躇いがちに叩く小さな手にこそばゆさを感じながらも、謝必安は寝たふりを決め込んだ。
「謝必安、ねぇ起きて……!」
いつもより早口の口調が彼女の動揺を如実に表していて、謝必安はにやけそうになる口元を誤魔化すように寝ぼけたふりをして背中を丸めた。当然、腕の中にいるエミリーを更に抱き寄せることになる。
「ち、ちょっと……!もう、こんなに寝起きが悪かったの……?」
心底困り果てたため息が耳元で落ちる。呆れているのは本当だろうが、伝わってくる鼓動の速さにどうしたって気分が浮き立ってしまう。
たまらない。すぐそばで耳朶を震わせる声も、腕の中にある柔らかなぬくもりも。
惜しむらくはこれが単なる不慮の事故であることか。この状況が合意上のものであれば良かったのに。
恐れていない。嫌悪も感じない。拒絶されていないのだと、どんどん頬が緩んでいく。
溢れるように湧く歓喜と彼女を望んでいる自分を、謝必安はもう怖いとは思わなかった。
ちらりと薄目を開ければ、はだけた襟元から白い背中がよく見えた。今の今まで寝ていたせいか、それとも焦っているためだろうか。花にも似た彼女の香りをより強く感じ、謝必安は栗色の髪が散らばる肌を凝視する。
逡巡はわずか。甘い匂いに誘われるように、髪の隙間を縫って謝必安は薄い肩に唇を寄せた。
「ひゃ……っ!?」
抱き締めた身体がびくんと跳ねる。その反応に気をよくしてそのまま吸い付き──刹那、耳に強い痛みを感じた。
「痛い!」
「寝たふりをしてたのね……さっさと起きて!」
反射的に首を逸らし、映ったのは眦を吊り上げたエミリーの顔。怒った様子の彼女が更に耳を引っ張ってきて、謝必安は降伏するように両手を上げた。エミリーは警戒心を全開にした猫のように勢いよく離れた。
「ちょっとしたお茶目のつもりだったんですが……」
冗談を示すように少し大げさに首を振ってみせる。実際はあわよくばと半分くらいは思っていたが、それを今この状況でバカ正直に白状したら後が怖い。下心は時と場合に応じて隠すものだ。
枕を盾にしたエミリーに睨みつけられる。彼女が抱えると自分の枕も随分と大きく見えるなと謝必安は呑気に思った。
「ふざけないで。こっちは気が気じゃなくてなかなか眠れなかったのに……」
「それは……私を意識して、ですか?」
枕に顔を半分埋め、拗ねたように呟く姿にまた悪戯心がうずいて問えば、彼女は丸い瞳を更に大きく見開く。が、次の瞬間には大変冷ややかな眼差しに変わってしまった。
「つい数時間前まで錯乱していた患者よ。予後を心配して当然じゃない」
つれない。謝必安は苦笑いを浮かべる。だがそれはまごうことなき事実だ。そしてできれば忘れてほしい。
ご迷惑をおかけしました、と謝必安は素直に頭を下げる。本当よ、とため息混じりの同意に疲れが滲んでいて、今さらながらに戻ってきた罪悪感に縮こまるようにすみません、と重ねて謝った。
じとりとエミリーが謝必安を見つめる。批難するような視線を甘んじて受け止めていると、その眼差しがふ、と和らいだ。
「でも、その調子なら大丈夫そうね。安心したわ」
思わず呆けていると、エミリーは穏やかに微笑みながらそう言った。ぽかんと間抜けな顔をした謝必安をよそに、枕を離してそのまま寝台を降りていく。
窓際に向かっていった彼女がカーテンを開ける。薄暗かった部屋にやわらかな陽光が差し込み、室内がさっと明るくなった。
日差しの淡さからして早朝だろうか。窓際で懐中時計を開いたエミリーは、時計の針を見てほっとした様子で胸を撫でおろしていた。
「よかった、朝食には間に合いそうだわ。謝必安、悪いのだけれど、部屋まで送ってもらえる?また今度、改めて時間を取るから……」
振り向いた彼女がきょとんと首を傾げた。その拍子に長い髪がさらりと流れる。開いた襟の奥からは、昨夜につけた覚えのある赤い花がちらりと見えた。
その姿を、謝必安は眩しそうに見つめる。
「どうしたの?」
「いえ……こういう状況を、あなたの国の言葉では何と言うのかと思いまして……」
「状況?」
「ええ、まるで深く愛し合った二人が初めて迎える朝のような──」
言い終わる前に、驚くような速さで文鎮が迫ってきたのだった。


◆  ◆  ◆


尊敬なる荘園主様:
ご機嫌はいかがですか。
先日ご報告いたしました、白黒無常の戦績下降、及び特定のサバイバーに対する攻撃拒否についての経過報告です。
原因と思われていた謝必安の精神状態が、先日回復したことを確認しました。これにより上記2点の問題行為もなくなった模様です。詳細はナイチンゲールからの戦績結果報告書をご覧ください。
その後2週間ほど経過観察を行っておりましたが、再び情緒不安定になるような傾向は見られません。
この問題は改善に向かっていくことでしょう。彼らが荘園のルールを犯すことも、サバイバーの脱出を手助けするような懸念も限りなく低くなったと判断いたします。
このまま何事も起こらなければ、白黒無常の監視も数日後に解除する予定です。
それでは。


終わりに『敬具』の文字を綴り、名前は書かないままペンを置く。少し時間をおいてインクを乾かし、折りたたんで封筒に入れて溶けた蝋をたらして封をした。
椅子から立ち上がり、壁に掛けられた絵画の前に移動する。額縁に飾られているのは仮面をつけた女性だ。黒いドレスに黒い羽がふんだんに使われた仮面。肩からは白く短い羽毛と薄茶の長い羽が生えているように見える。
鳥人間のような婦人の油絵に、九枚の花弁が円をえがく『ミューズの印章』を掲げる。すると、赤い封蝋がほのかに光りだした。
手紙が宙に浮き、絵画に吸い寄せられる。封筒の先端がついた瞬間、油絵の具で描かれた絵が水面のように波打った。
かすかな光を放ちながら、絵画は音もなく手紙を飲み込んでいく。完全に手紙が吸い込まれると、油絵は何事もなかったかのようにただの美術品に戻っていた。
ふ、と小さく息をついた瞬間、ノック音が部屋に響いた。
「マーサー!そろそろゲームの時間よー!一緒に行きましょう」
「ええ、今行くわ!」
この明るい調子はマルガレータだ。彼女の声に返事をして、机の上に置いた信号銃を手に取る。
腰のホルスターに銃を収め、ハットラックに掛けられた軍帽を被って姿見の前に立った。
ここにいるのは、マーサ。ベハムフィール家の娘。立派な淑女であれと育てられ、反発して、空を飛ぶ夢を見て、叶わずに落ちぶれて荘園に辿り着いた女性。マーサ・ベハムフィールだ。
ゆっくりと目を閉じ、そして開く。サイドに結い上げた巻き髪。空軍の象徴である黄色の軍服。褐色の瞳には、勝気な軍人少女が映っていた。
「よし、準備万端」
鏡に映る自分を見て唇を吊り上げる。
確認するように呟き、マーサは鏡から離れる。彼女は一度だけ婦人に視線を向けるが、すぐにドアノブに手をかけて部屋を出て行った。




「随分と思い切り投げつけてくれたものですね、あれは……」
先日の出来事を思い出し、ひとり忍び笑いをもらす。時間前の待機室で、謝必安は革張りの椅子にゆったりと座っていた。
あの朝に投げられた文鎮は見事に謝必安の顔面に命中し、それを投げつけた張本人によって治療された。ぶつけられた自体は特に気にしていないのだが、その時のエミリーの反応が面白かったもので事あるごとに思い出してしまう。
そもそも彼女の非力な力では怪我にすらならないのだ。ハンターが非常に頑丈なことは彼女もわかっているはずなのだが、相当動揺していたのだろう。真鍮製の文鎮が謝必安の顔から寝台へぽとりと落ちた後、エミリーは慌てて湿布とガーゼを取り出して手当てをし、そのまま逃げるように去っていった。
送ってほしいと直前まで謝必安に頼んでいたのに、聡明な彼女がそんなことも忘れて。勢いよく飛び出していった背中が脳裏によぎり、さらに笑みがこぼれる。
穏やかな気分だった。とても。こんなに心が凪いでいるのは久しぶりで、謝必安は噛みしめるように目を閉じる。

あの出来事のあと、謝必安は范無咎にも打ち明けた。エミリーと同じように。自分が何に悩み、何を恐れていたのかを。
返ってきた手紙は、紙越しでもわかるほどにそれはそれは特大の雷を落とされたのだった。
『何故今の今まで黙っていた。そんなに悩むくらいなら話せ。ひとりで答えが出ないならずっと袋小路のままだろうが。いつもは平然ととんでもない策を思いついて味方どころか獲物すら誘導してみせるくせに、お前自身の事になると頭が回らないのは相変わらずだな。少しは心配するこっちの身にもなれと前にも言っただろう。大体お前は昔から勝手に一人で抱え込んで……』
と、これまでで一番長い手紙をもらった。手紙らしからぬ分厚さにしばらく無言で見つめてしまった。
そういえば無咎は説教がすごく長かった、と苦笑いをこぼす。普段の手紙もこのくらい書いてくれればいいのに、などと返事をしようものなら更に説教が倍以上になって返ってきたことだろう。
これ以上増えるのは御免だったので、からかう代わりにごめんと謝った。范無咎が自分を叱るのは、それほど謝必安が心配だったからだ。それがわかっているから、謝必安の持っている限りの誠実さを筆に込めて素直に謝った。
すると予想外のことに、范無咎も返信に同じ言葉を綴ったのだ。
それは謝必安を独り置いていってしまった謝罪と、結果として謝必安に決定的な追い打ちをかけてしまったことへの後悔だった。
説教の文とは打って変わって報告書のように淡々と、弁明の余地を自ら潰しているような不器用な文章で、あの頃の思いを范無咎は語った。
『身を投げたことは後悔していない。だが選択を誤った。お前の気持ちを考えていなかった。だから、すまなかった。』
最後にその手短かな文字を読んだとき、謝必安はまた泣いた。
やっと聞けた。ずっと訊きたかった。ようやく知ることができた。嬉しくて嬉しくて、謝必安は何度も読み返しては涙をこぼした。
ようやく泣き止んだ頃、謝必安はすっきりした面持ちで静かに筆をとった。
自分もずっと謝りたかった。そんな選択をさせてしまったこと。范無咎の願いを無下にしてしまったこと。それでも孤独には耐えられなかったこと。
互いにあの時の心境を打ち明けるたび、胸の奥底で長年凝り固まっていた塊がすっと溶けていくようだった。
そうして、ようやく謝必安のなかで今の范無咎がはっきりと像を結んだ。きっと范無咎も同様に。
それほどに、自分たちは何のてらいもなく本心を綴りあった。

謝必安の恐れていたことに関しては、結論から言えばエミリーが後日話した推測と同じ答えに辿り着いた。
例え処罰されるとしても、謝必安と范無咎を引き離す真似はしない。その可能性が高いだろう、と。
二人で異なる能力を持っている自分達に対して、どちらか一方を消すようなことはしないだろう。ゲームを円滑に進めることが目的だと仮定すれば、自分たちの能力が欠けるような罰では本末転倒である。
そう、今なら納得できる。
(本当に余裕がなかったんだなぁ…… )
椅子にもたれたまま、謝必安は苦笑いをこぼして額に手を当てる。思い返せば何一つ正常な判断ができていなかった。本当にバカなことをした。范無咎も手紙でお前はバカだと自分を叱ったが、まさにぐうの音も出ない。
あの時、正気に戻れなかったらどうなっていたことか。考えるだけでもぞっとする。一歩踏み外すだけで、二度と這い上がれない奈落へ自ら飛び込むところだったのだ。
「……聡い女性だ、本当に」
ひとりでは抜け出せなかった。視野が狭くなっていることすら気付けなかった。
エミリーにはそれがわかっていたのだろう。范無咎のように深い事情を知るわけではないのに、謝必安を向き合い、そのうえで正しく手を差し伸べてくれた。
あれが医師というものか。見返りを求めない、慈悲の精神。それを懸命に体現しようとするエミリーに尊敬の念を覚える。
同時に、少しだけ寂しくもあった。彼女に落ち度があるわけではない。これは謝必安の抱く感情の問題だ。
大きく息をはいたところで、待機室に人の気配が増えた。幕のかかった奥を見れば、いつものようにサバイバーが椅子に座って雑談をしている光景が目に入った。
ざっと彼らを一瞥し、そうして長机の端に視線を留める。上下が繋がった白い衣に青い上着、ぴんと背筋を伸ばして淡く微笑む横顔。
エミリーの姿を認めて、謝必安はすいと目を細める。
けれど、ひとつだけ。
「エミリー、あなたは勘違いしています」
彼女は優しいと言った。謝必安は優しいから、それほど悩んでいるのだと。
違いますよ、と謝必安は聞こえないとわかっていながら、彼女に向けてやんわりと否定の言葉を口にする。
「私を優しいと思うのは、無咎やあなたの前ではそうしているからです」
范無咎が大切だから、エミリーには嫌われたくないから。謝必安は彼女達の前では"そう"あれるようにしている。
謝必安の世界は実に単純明快にできている。中心には自分と范無咎、今はそこにエミリーもいて、それ以外は全て枠外にある。極端に言ってしまえば他の者はどうでもいいのだ。
レオには世話になっているから相応に振舞う。美智子やヴィオレッタも、敵意を感じないから自分も同じように対応する。
鏡のようなものだ。厚意には厚意を。悪意には相応の報復を。相手が自分に与えるものをそのまま返している。ただそれだけ。それを人は社交的だと捉え、謝必安は人当たりがいいと評価する。
その評価が特に自分を貶めるものでもないから、敢えてその誤解を解かないだけだ。おそらくバレている者にはバレているのだろうが。
だけど、范無咎とエミリーにだけは違う。二人には、それ以上の想いを与えたい。受け取ってもらいたい。そしてできるなら同じものを受け取りたい。
だからそのために、彼女の言う『優しい謝必安』であろうと努めるのだ。
「あなたと違って、私の優しさはひどく限定的なものなんですよ」
そう知ったらどんな顔を見せてくれるだろう。困惑か、驚きか。あわよくば照れた表情を拝めないかと思うが、残念ながらそれは期待できないだろう。謝必安は苦笑いをこぼす。
こんなことならもっと堪能しておけばよかった。つい欲望に駆られて背中に吸い付いてしまったことを今さらながらに惜しむ。ああしなければもう少し粘れただろう。いや、それこそ滅多にない好機だったのだ。逃す方がもっと惜しい。だがやはり物足りない。
悶々と考えていた謝必安は、ふいに小さく吹き出した。そんな些細なことに悩んでいる自分がおかしかった。しかもそれなりに真剣だったと気付いてしまい、なおさら笑いが込み上げてくる。
声を潜めてひとしきり笑い、治まったところで息をついた。そして口唇を吊り上げたまま、謝必安は向こう側にいるエミリーを見つめた。
「いつか、僕らでそんな顔をさせてみたいな。ね、無咎?」
親友の宿る傘に触れながらそう語りかける。視覚以外の五感が遮断された傘の中では、当然声は届かない。しかし何か企んでるような気配を表情から感じ取ったのだろう。青緑の光をちかりと明滅させる反応は、范無咎の不信感を表しているように思えた。
謝必安は機嫌よく笑って鎮魂傘を抱える。ただしゲームは真剣勝負。負け続きだった分、貪欲なくらいに勝ちを取っていかなければ。
頭の中で策を巡らせながら、謝必安は舞台に立ち上がる。廃墟と化した病院の上には、不似合いなほどに晴れやかな青空が広がっていた。





あとがき
これにてひと段落。めでたしめでたし…とまではいかないけど、白の悩みは一件落着した感じ。
ここまでの話は副題として白黒無常仲直り編みたいな感じで書いていたので、自分なりにひと区切りがついてよかったです。白黒の背景推理や紹介文などを読んでから、すれ違ったまま離れてしまった白黒にあの雨の日のわだかまりを解消して、改めて生前と同じくらい遠慮なしに仲良くしてほしいなと思っていたので。
仲違いしたわけではないのでしょうが、あんな別れ方をして、今だって「かわるがわるすれ違い、憂う思いは断ちがたい。」って状態なわけですし…聞くに聞けないことも増えてしまったんじゃないかなと。だから自分たち以外の第三者がいて、かつ意思疎通ができる人がいる荘園なら、こんな奇跡もあったらいいなと、そんな願望を込めました。
そういうわけで弊荘園の白黒はやたらと人間性が強いハンターになったなと思います。レオやピエロのように復讐の為に呼ばれた存在ではなさそうですし、こんな白黒もいてもいいかなという。



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